今回ご紹介するのは、トロントでフリーランスの通訳として活躍されているファンフェーン庸子さんです。さまざまな分野の通訳をされていらっしゃるファンフェーンさんに、今回は「キャストサポート通訳」の業務内容などについてお話を伺いました。


今回は映画やドラマの制作現場においてキャスト(俳優)の言語的サポートを行う、「キャストサポート通訳」の業務内容やその役割をご紹介いたします。近年の作品制作では国際共同制作が増え、異なる言語や文化背景を持つキャストが参加する機会も増えてきました。それに伴い、この分野の通訳の需要が高まっています。この業務は言語を訳すだけでなく、キャストが演技をしやすくするための環境を整え、制作側とのスムーズな コミュニケーションを支えるための架け橋としての役割も担います。

皆さんが一番イメージしやすい業務内容は、監督がキャストに求める演技の意図や感情表現などの通訳だと思います。そのほかにもキャストが自身の役について監督や脚本家と話し合う場にも立ち会います。深い会話内容を通訳する必要がありますので、キャストの希望や台本は必ず事前に把握しておきます。

また、異文化の文化的背景を理解した上で通訳を行うことも必要です。例えば、特定のジェスチャーや表現が文化によって異なる意味を持つ場合は、通訳と同時にキャストにその意図を正確に説明する必要があります。そのように文化的な誤解が生じるのを防ぐのもキャストサポート通訳の役割です。

撮影終了後はメディアのインタビューや舞台挨拶といった、キャストのプロモーション活動に参加することもあります。この場では、キャストが作品への思いを的確に伝えられるように通訳を行います。現地のファンの方々との交流という観点からも、慎重で丁寧な通訳が求められます。

このポジションは勤務時間が長く、緊急事態が発生した際にはキャストの意図を汲み取って迅速な対応をしなければならず緊張との闘いですが、キャストの役作りや作品の完成に貢献できること、また、国際色豊かな現場で第一線で活躍されている方たちと一緒に仕事ができる点がこの仕事の魅力だと思っています。これからも、映画やドラマの成功を陰からサポートしていきたいと考えております。


ファンフェーン 庸子さん (Yoko van Veen)
フリーランス通訳・ミュージシャンプロモーター

神奈川県平塚市出身。10年以上トロントで会社員を勤めた後に独立。現在はフリーランスの通訳として日英通訳を行う。トロント市への行政視察団の通訳をはじめ、カナダ大使館やトロント大学、企業、学会、医療、アスリート等、さまざまな分野の通訳を担う。また、その傍らでミュージシャンのプロモーターも務めている。