今回の「あなたに伝えたい、特別な音楽家」は、ロン・コーブ(Ron Korb)さんです。

 ロン・コーブ(Ron Korb)さんは、カナダ・オンタリオ州トロント出身のフルート奏者であり、作曲家、作詞家、音楽プロデューサーとしても活躍しています。中国では「龍笛」、台湾では「雷恩寇柏」、日本では「フルートの貴公子」として知られています。コーブさんの音楽は、クラシックやジャズ、ラテン音楽、アジア音楽、ケルト音楽、中東音楽など、世界各地のジャンルを融合させた独自のスタイルが特徴です。多くの楽曲は物語をもとにした表題音楽で、コンセプト・アルバムという形で制作されています。こうした音楽の発想は、アジア系の祖先をたどる探求や、世界各地への旅行経験から得られているそうです。

 コーブさんが受けた音楽教育は、子どもの頃にリコーダーを始めたことに始まり、ティーンエイジャーの時期にはアイリッシュ・ファイフ(アイリッシュ音楽で使用される横笛の一種)とドラムのバンドにも参加されました。トロント王立音楽院で学び、地元の音楽コンクールでも受賞歴を重ねた後、ジャズを学ぶためヨーク大学に進学。その後トロント大学に編入し、クラシック・フルートを専攻して音楽パフォーマンス科の学位を取得しました。大学卒業後は中国の竹笛に出合ったことをきっかけにアジアの笛に興味を持ち、1991年に来日。赤尾三千子さんに師事して、雅楽や篠笛、龍笛を学びました。それ以降、世界中を旅しながら各地の笛を学び、200本以上の笛を収集しています。

 音楽活動としては、これまでに20か国で30枚以上のソロアルバムをリリースし、デビュー作『Tear of the Sun』はカナダのニューエイジ・ミュージックチャートで1位を獲得しました。また、オリビア・ニュートン=ジョンやリオナ・ボイド、映画監督のアン・リー氏らとも共演し、映画音楽やテレビ番組でも幅広く活躍。作曲家としてもアジアの有名アーティストに楽曲を提供し、ヒット作を生み出しています。さらに、オーストラリア音楽試験委員会から教材の作曲を依頼されるなど、音楽教育にも貢献しています。世界の音楽の橋渡しをする存在として、今後の活躍にも注目が集まっています。

ロン・コーブさんホームページ: https://www.ronkorb.com/


Photos: ©Susan Howling