オンタリオ州の看護師不足の状況のもとで発生したコロナウイルス感染症。パンデミック中は医療従事者一人ひとりの負担が増え、まるで先の見えないトンネルを進むようだったのではないでしょうか。そんな中でも最前線で頑張っている皆様の姿を見て、ますます尊敬の念が深まりました。今でも感染者は増え続けています。日々頑張っておられる医療従事者の皆様に、心より感謝いたします。

 今回は、3年ぶりに開催された「医療従事者新年会」の幹事を務められているステポナイティスゆかりさんに機会をいただき、医療従事者の方々のパンデミック中のご経験、そしてオンタリオ州での看護師(RN)の資格の取得方法についてコメントをいただきました。

オンタリオ州で看護師(RN)の資格を取得するには
 私がトロントに来た2010年以降は厳しい就職難のためか免許移行のハードルが高く、日本でRNでしたが、オンタリオでRNになるまでに勉強し続けて10年かかりました。コロナ移行、ナース不足もあるせいか、非常に早くRN取得が可能になり、今日出席されている方で、昨年トロントに来て9ヶ月でRNを取得、理想の職に就き既に活躍されておられるので、今は好機です。また日本で看護科以外の大卒の方はたった2年の大学編入でオンタリオのRN資格が取得できる方法もあります。RNの初任給は$70,000-85,000と安定した生活も望める上にやり甲斐のある良い職業でお勧めです。
ステポナイティスゆかり RN

オンタリオ州で看護師(RN)の資格を取得するには
 オンタリオ州でRNになるには現在いくつかの方法があるようですが、私の場合、まずはNational Nursing Assessment Service (NNAS)に登録することから始めました。NNASはInternationally Educated Nursesが母国でどのような教育を受け、どのような職歴があるのかを審査する機関です。私は日本での教育や職歴はカナダでの看護師資格取得には十分ではないと聞いていたので、この審査を待つ間にConestoga Collegeへの入学を決めました。このカレッジにはEnhanced Practice for Internationally Educated Nursesという2年間のプログラムがあり、これを卒業することで、英語の試験を受けなくともEnglish Competencyを満たすことができます。また卒業後には3年間の就労ビザを申請することができます。そして卒業後にCollege of Nurses of Ontario (CNO)に成績表とNNASの最終レポートを提出することで、Authorization to Test(ATT)が送られようやくNCLEX(看護師国家試験)を受けることができます。そして晴れてこの試験に合格することでCNOにRNとして登録することが可能となります。
Mount Sinai Hospital
米澤幸乃 Clinical extern

パンデミック中の経験
 COVID-19が猛威をふるい、残念ながら重症化された方が多くいらっしゃいました。私が勤めるICUも例外なく、最終手段の治療と言えるECMOを必要とした方が、通常ではありえない人数いらっしゃいました。ICU病床数も拡大されましたが、その反面スタッフが足りず過酷な勤務が強いられ、離職者も後を絶たない状況でした。私が入職した2021年にはワクチン普及に伴い重症化される方が減少していましたが、それでも未だにスタッフ不足は深刻な問題として残っている状況です。通常に戻るにはもう少し時間が必要なようです。
Toronto General Hospital / MSICU
土川 良美 RN

パンデミック中の経験
 今思い出すと、2020年3月「うちの病棟はあまりコロナに影響されないね、他の病棟は影響受けている所もあるのに、、、」と同僚と話していたのを覚えています。最初は私の働いている病棟では2-3週間に1人コロナの人がくるといった感じでした。そして4月にロングタームケアの施設に臨時で働くことを希望したら、驚くばかりでした。いつも以上のスタッフ不足に上乗せしてケアする人がいない、入所者は寂しくて、最低限の必要なケア(飲食、声をかけてもらえないなど)が受けられるず、死ぬのを待っていると言うのを目の当たりにしました。そんな勤務を終えた後は、感染防御服とスクラブを触らないように気をつけて施設内のシャワー室で脱ぎすぐシャワーを浴びて、恐る恐るコロナにかかってないことを祈り家に帰りました。数ヶ月で自分の病棟でも同僚の働き方にも変化が見えました。休日や休暇でいつも通りにできることができず、ストレスはたまり、休む人が多くなり、そして病棟もアウトブレークで一時閉鎖、スタッフが違う病棟に手伝いに行ったり。私は7月に集中治療室へおよそ3週間配属。そこでもスタッフは人員不足の中でも、家族/友人に会えない患者さん達に最期にできることを、と考えてケアをしました。いろんな職種の人が心身の影響を受けました。私も精神的に疲れ2021年の3月に6週間休職。だけどそんな時でもやっぱり患者さんや家族から“ありがとう”って言われるから今まで続けられたと思います。
トロントウェスタン病院の脳外科/脳梗塞ユニットのステップダウンユニット
稲田 保治 RN